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“朝日グレンデール”その後の戦い

慰安婦問題における朝日新聞の責任を追及する戦いが裁判から言論の世界に移って、かなりの時間が経ってしまいました。

 

ケント・ギルバートさんらと公開シンポジウムを開催したのが28日ですから、既に8か月が経過したことになります。

英語による慰安婦強制印象操作の中止を求める一万筆以上の署名を集めて、ケントさんと築地の朝日新聞本社に持ち込んだのが76日でした。

あれから記者会見が3回、朝日新聞との書簡のやり取りは5回に上ります。

 

最初は朝日新聞が今でも続けている、英語版における慰安婦強制印象操作の実態を告発し、誤解を招く英語表現の使用中止の申し入れから始めたわけですが、議論の最中から思わぬ方向へ展開して今日に至ります。

 

これまでの朝日新聞とのやりとりをまとめてみましょう。

 

山岡・ケント

慰安婦関連の記事に必ず「Comfort women who were forced to provide sex to Japanese soldiers (日本兵に性行為を強要された慰安婦)」と挿入するのは、強制連行や性奴隷化を連想させる印象操作であり、止めるべきだ。日本政府はそれらを明確に否定している。

 

朝日新聞

当該表現は「意に反して慰安婦にさせられた」という意味だ。河野談話は慰安婦制度の強制性を認めている。

 

山岡・ケント

吉田清治証言を虚偽と認めて撤回した事実を海外に向けてしっかりと告知すべきだ。

 

朝日新聞

201485日の朝刊に掲載した撤回記事は英訳してネット上で公開してある。(URLを示す)

 

ここで想定外の事態が発生します。確かにURLを打ち込むと、その英訳記事が見られるのですが、ケントさんも私も見たことがなかったのです。そこで、二人で出演した動画でケントさんが思わずつぶやきました。

 

「でもこの記事、半日かけて検索しても出てこないんだよねえ」

 

番組では該当記事のURLも大写しにして視聴者に見せました。すると、番組を見ていたネットに知識のある複数の方々からツイッターなどで連絡があったのです。

 

「この記事、グーグルなどで検索されないようにプログラムされていますよ!」

 

なんと、ネット民の調査により、問題の『「済州島で連行」証言 裏付け得られず虚偽と判断」』という記事と、『「挺身隊」との混同 当時は研究が乏しく同一視』という慰安婦と女子挺身隊の混同を認めた重要な記事のふたつだけに、グーグルなどの検索エンジンを忌避するメタタグ、と呼ばれるコードが仕込まれていたのです。それはこういうものです。

 

<meta name="robots" content="noindex, nofollow, noarchive">

 

普通、ネット上に記事を配信する場合は、できるだけ多くの人に読んで欲しいと考えます。そのためには、検索エンジンの検索結果のできるだけ上位にリストされることが重要です。そのような結果を得るために様々な工夫を凝らすことを、SEO(Search Engine Optimization)と呼びます。ところが朝日新聞は、20148月に配信した11本の関連記事のうち、朝日新聞の虚報に関して最も核心的なこれら2本の記事だけに見つかりにくくする仕掛けを仕込んでいたのです。これを「逆SEO」と呼びますが、訳ありの個人や組織が行うこととされています。つまり、傷のある経歴を隠したい人や、犯罪の連絡用サイトを運営する組織がわざとサイトを隠すために行うことが多いのです。どうりで見つからないわけです。一般の検索エンジンからだけではなく、朝日新聞のサイト内検索を使ってもヒットしないのですから徹底しています。

 

そしてさらなる疑問が呈されました。問題の2本を含む11本の記事すべてが、英語で書かれているにもかかわらず、朝日新聞デジタルの日本語サイトに掲載されていることがわかったのです。The Asahi Shimbunという英語サイトは別に存在しています。これはいったいどういうことでしょうか?実は、これらの記事は一見英語で書かれていますが、プログラム上は「日本語の記事」と定義されていたのです。つまり、本来は英語圏の人々に読んでもらうべき記事が、日本語の記事として日本語のサイトに掲載されているのです。その上でさらに、最も重要な記事には検索を回避する仕掛けまでしていたのですから、海外の人の目に触れる機会は非常に少なかったと言えるでしょう。

 

私たちは即座に「なぜこんなことをするのか?」と朝日新聞に質問しました。すると朝日新聞はこう回答しました。

 

「公開環境に検索回避のタグを付けた記事をアップして、みた目をチェックしたあと、タグを削除するはずが、作業漏れでこのふたつの記事だけ取り忘れてしまいました。ご指摘を受けて削除いたしました」(山岡要約)

 

IT業界で働く方々は異口同音に、そんな作業手順は考えられないと言います。そこで私は、ITエンジニアの友人のヘルプを借りて、改めて問題記事を様々な角度から自分で検証してみました。そして驚くべきことを発見しました。

 

なんと、挺身隊と慰安婦を混同したことを認めた記事の日本語オリジナルにも、いつの間にか例の検索回避のタグが挿入されていたのです。詳しく調査してみると、2014年8月5日の配信時には入っていなかったことがわかりました。つまり、問題のタグを後から挿入していたことがわかったのです。朝日新聞にこの矛盾の説明を求めました。

 

すると朝日新聞は今度は「指摘されたメタタグを削除する作業の際に誤って挿入してしまいました」と答えてきました。(山岡要約)

 

もちろん、まったく説明になっていません。この混乱ぶりは、朝日新聞広報部自身、このような細工を把握していなかった可能性を示唆しています。しかし、これらは偶然に起こることではありません。誰かの指示で、誰かが行ったということでしょう。

 

私たちは、英訳された記事を日本語サイトに置いておいても意味がないので、英語サイトに移すように求めましたが、朝日新聞は「日本語・英語で対照しやすい形でお示しする」と言って拒否しています。いったい誰のために対照するのでしょうか?日英の記事が並んでいるわけでもないのです。もう完全に意味不明です。

 

さすがにこれ以上続けても、意味のある交信ができないと思い、終止符を打とうと思ったのですが、ネット民から次々と新たな発見が寄せられてきました。

 

たとえば、メタタグが削除される前、問題記事はグーグルでも朝日新聞のサイト内検索でも出てこなかったのです。その後メタタグが削除されて、グーグルで検索できるようになったので、当然朝日新聞のサイト内でも検索できるようになっていると思い込んでしまいました。ところが、あるネット民の方が改めて検証したところ、グーグルでは検索できても、サイト内検索では依然として検出できなかったのです。どうやら、ネット上で公開されていても、配信から一年を経過すると検索できなくなるシステムになっているようなのです。

 

さらに、あれだけ英訳記事を英語サイトに移すことを拒否しておきながら、聞蔵という朝日新聞の有料データベースでは問題記事を含むすべての英訳記事が英語サイトに収録されていたのです。有料で限られた研究者の目にしか触れない環境では躊躇なく英語記事として収録されていたわけです。これは大きな矛盾ですね。他にもありますが、せっかくネット民の方が努力して発見してくれた事実なので、改めて朝日新聞に書簡を送付しました。

 

天網恢恢疎にして漏らさず。事態は思わぬ方向へ発展し、まだ収束していません。興味深いことは、朝日新聞との対話が期せずしてオールドメディア(紙媒体)とニューメディア(インターネット)の衝突となったことです。この顛末は近く本にまとめて出版します。

 

私は8月に「情報戦はこう戦え」(育鵬社)という本を上梓し、いかなる場合も「感情的にならず、事実(ファクト)を積み上げて議論する」ことの大切さを実体験を踏まえて説明しました。今回も、朝日新聞を批判することが目的ではなく、現実に国益を損ねている具体的な問題を除去することを目的に地道な努力を続けております。引き続き皆様のご支援をお願いいたします。


寄稿のお知らせ

発売中の雑誌、『正論』『Will』『Hanada』に、それぞれ山岡鉄秀が朝日新聞の一連の件について、寄稿しております!

 

まだお読み頂いてない方は是非!!